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商業施設新聞
[2004.6.15]
ユニーク商業人列伝 第2
(株)アータライブ 代表取締役 高橋 歩氏
若いアーティスト達の感性を商業、工業の世界に
「日本の小売店は演出が足りない」
消費者に楽しさや新しさを感じてもらう空間を提供
高橋 歩氏 短大を卒業し、外資系商社に半年ほどいたその女の子は、何かを求めて遥かヨーロッパの地、イタリアへと渡る。イタリアでの5年間の留学生活は、その女の子の考え方を根本的に変えてしまった。彼女がイタリアで出会ったものは、日常性の中にある文化としてのアートであった。
 街角にはデザイナー、絵描き、イラストレーターなどが多く溢れ、それを評価し日常性の中に取り入れていく大衆カルチャーがそこにはあった。生活している身のまわりのものや普通に出会うであろう街の風景の中に「アート」という概念を持ち込めないか。その女の子の脳裏に電撃のようなアイデアが炸裂する。「日本に新しいアートのムーブメントを作りたい」。帰国した女の子は、日本で唯一のベンチャービジネスを立ち上げる。若きアーティストたちの感性を商業、工業の世界に持ち込むという画期的なビジネスモデルを確立したカンパニー、(株)アータライブの誕生である。
――高橋歩社長は、イタリアから帰国後にインディーズと言われる、まだ世に知られていない若いアーティスト向けの公募展を東京青山で企画されますね。

高橋  この公募展は、最初の回で400人、その次の回はそれを上回る出展数が集まりました。この時、単なる作品発表の場としてだけでなく、アートをコンテンツとしてデザイン的に発信できないかと考えました。埋もれている若い才能は多いのです。これを発掘し、育て、商工業のデザインへと繋げる。それが私の社会的使命だと考え、このビジネスの立ち上げにいたったのです。

――事業展開の実際は。

高橋  現在、当社に登録されているアーティストは、1000人に及び、彼らが創造するコンテンツの活用性をプロデュースし、情報機器、家電製品、服飾、建造物の内外装など様々な分野に新しいデザインとして導入し、アートのある楽しいライフスタイルを提案しています。一番初めにヒットしたのは、ミニディスクのデザイン、その後大手アパレルメーカーのTシャツのプリント柄で、CD-Rパッケージのデザイン、さらには半導体のフラッシュメモリーにもアートデザインを導入していったのです。

――ところで、さいたま市の酒販スーパーの外装、内装にアートデザインを導入したことが話題となっていますね。

高橋  これは、現在子育ても両立しながらアート活動を展開している石川ゆかりさんの作品約10点を起用しました。『生鮮酒販YAMADA 原山店』(さいたま市緑区原山1-2-2、2003年6月18日オープン)の新装オープンにつき内外装、ロゴマークを制作したのです。スーパー量販店にオリジナルのアートデザインを導入したのは、おそらく国内で初めてのことであり、地域では多くの評判を呼んだと聞いています。周辺には競合するイトーヨーカ堂、サミットなどがあるのですが、統一された店舗作りとは異なる内外装に、差別化された店舗演出を一般消費者が感じ取ったという意味で大きな出来事でした。

――これに続く計画は。

高橋  ヤマダ酒販さんの評判を聞きつけ、埼玉に地盤のある他の専門店チェーンの方から仕事の依頼が来ています。やはり、そのチェーン店さんの「内外装リニューアルに伴いアートデザインを導入したい」という前進的なお考えがあるようです。その他にも外食レストランや保育所、老人施設などからも引き合いがあります。例えば、アルツハイマー病の老人が入るお風呂に、銭湯によくあるレトロな富士山の絵を描いたところ、驚くべきことに病気の進行が止まったと言います。これは感情や精神に訴えかけるアートの秘めた力であり、その人間の持つ原風景が戻ってきたのです。アートにはそういった目に見えない効果があるのです。
生鮮酒館YAMADAの店舗外装
生鮮酒館YAMADAの売り場
生鮮酒館YAMADAの店舗外装(上)
生鮮酒館YAMADAの売り場(下)
(石川ゆかりさんの作品)

――日本について経済は一流、政治は二流、文化は三流とよく言われますが。

高橋  確かに高度経済成長を背景に国づくりを進めてきた日本は、何か大切なものを置き去りにしてきたのかもしれません。障子を通して入ってくる柔らかな和光、白と黒とグレーというモノトーンだけで構築される城郭建築、石と砂と苔だけで表現される宇宙ともいうべき枯山水の庭など私たちの祖先が残したアートの遺産は数多いのです。しかし、残念ながら現在の経済最優先の日本のカルチャーの中にあっては、そうしたアートが日常性の中に溶け込んでくることがありません。これは、とても悲しいことですね。

――今後の展開については。

高橋  ベンチャー企業の目標として、当然のことながら、より高いレベルのIPO取得を考えたいです(既にグリーンシートには登録済)。また、トータルセールスとしては、ここ1〜2年で1億円以上を目指したいと思います。

―― 一消費者として見た場合、日本の小売店の現状をどう考えますか。

高橋  とにもかくにも演出が足りないと感じますね。どちらのお店も品揃えの豊富さ、商品の並べ方などは追及されていますが、その空間で過ごす消費者への「楽しさ」や「新しさ」の提供があまりなされていない気がします。物欲を満たすだけの空間でしかなく、空間そのものに感性や表現が少ないですよね。そこのところをくすぐってくれるお店はあまりありません。ただひたすらに安い、うまい、お得だというメッセージしか受け取れません。小売店は、消費者に最も近いところにいるのですから、もっとオリジナルな自己主張を盛り込み、アートを導入するなどして、消費者に買い物カルチャーの豊かさを享受させて欲しいと思います。また、舞台でいう観客にあたる一般消費者の方も「こっちの方が1円安い」、「向こうの店は特売をやっている」ということだけでなく、情緒的な部分での充実感というものも大いに要求して欲しいと思います。消費者の感性に訴えかけるような洗練された小売店が存立し、そこに役者又は観客としての一般消費者が買い物をさらに楽しむという文化が今こそ望まれているのではないでしょうか。
(聞き手 編集局長 泉谷 渉)

▼(株)アータライブ
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http://www.artalive.jp/