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商業施設新聞
[2005.1.12]
ユニーク商業人列伝 第25回
NPO法人コムーネ汐留イタリア街プロジェクト
クリエイティブ・ディレクター 三浦健次氏
“浅草っ子”の情熱が描く 幸せになるためのイタリア街
元商社マンにして都市経営のスペシャリストが問いかける「真の豊かさとは」
かばん職人、靴職人--路地裏の小道に並ぶ情緒豊かな隠れ家
三浦健次氏  東京港区にイタリア街をつくろうという計画が進んでいる。フィレンツェ、ボローニャ、レッジョ・エミリアといったイタリア中部の町をモデルにしたまちづくり「汐留シオサイト5区 イタリア街プロジェクト」だ。え〜、なんで東京にイタリアなの? という疑問は、石原東京都知事の言を出さずとも感じる人は少なくないだろう。しかし、NPO法人コムーネ汐留理事・イタリア街開発プロジェクト クリエイティブ・ディレクターとして、まちづくりのキーマンになっている三浦健次氏(=写真)の頭の中には、単に物真似ではない、経験と理論に裏打ちされた「理想の街」の明確なイメージがある。
 8年前に初めて訪れたイタリアの街に衝撃を受けた三浦氏は、2000年、勤めていた商社を辞めてイタリアへ留学。ドムスアカデミーの大学院修士課程で都市経営を学び、帰国後、都市計画に関わるなかで本プロジェクトのクリエイティブ・ディレクターに抜擢された。時に逆風を受けながらも信念を貫き奮闘を続ける“東京は浅草生まれ”、三浦氏にお話を伺った。


――まずは、イタリア街プロジェクトの理念について説明をお願いします。

三浦  ドムスアカデミーとの共同研究のもと、ジャプリー(JAPAN+ITALY)という仮説をたてて、それに基づいたまちづくりを進めています。単にイタリアの店を並べるだけではだめ。ここからオリジナルなもの、新しいものを市場に発信することが理想です。

――具体的にはどんな街になりますか。

三浦  街区面積5万5000m²にテナントが110店、文化施設では学校と研究機関が入るほか、四ツ星、五ツ星などの価値ではないヨーロッパのデザインホテルの導入も検討しています。ホテル自体がひとつのプロモーションにつながっていて、例えば理念などを盛り込んだビジネス発信地としてのホテルを作れないかと、イタリア企業と日本の受け皿を調整中です。裏通りにもこだわって、ちょっと情緒を誘われる本物志向の靴職人、オーダーメイドのかばん職人など隠れ家のようなお店を並べたい。表通りと裏通りに使う看板の種類をルールに分けて属性をつけたり、東京都の区画整理事業に沿った形で通りの街灯と裏の街灯の照度を分けるような工夫もします。

――東京にイタリア街というと、長崎オランダ村のような観光テーマパークを連想しがち。

三浦  汐留は交通アクセスもそれほど良くはないし、東に銀座、西に六本木といった商業地があり需給のバランスはとっくに崩れている。計画当初から『商業的自立のための方向付け』を目的にイタリアを想定したわけではありません。例えばミラノは、ブランド店だけでなく作り手やデザイナー、学校、ホテル、会場もあって、イベント時は街全体がフル稼働する。その結果、街自体の購買量はわずかでもミラノに店を持つということに価値が生まれています。私たちが目指す方向もこうした中小零細企業を中心とした街のあり方や、住民と商業者が一体となったまちづくりの姿勢の具現化にある。いま、シネコンからの打診もあって、大抵シネコンが出るとなると皆さん喜ぶのですが、目指す街の姿からすると必ずしも必要ではないんです。

――しかし、合意形成が容易でないことも多いのでは。

三浦  全員が同じ思いになるというのは不可能です。イタリアでも好き嫌いはあるので全員に利益が分配できることをきちんと説明するしかありません。人を集めるだけなら、最初に飲食店を並べてしまえば簡単。けれど、この街にはこういう質のお店がいっぱいある、ほかで売ってないものがあると評価される街のほうが面白い。仮にイタリアと関係のない店舗が入ってきたとしても儲からないことはだんだん分かるはず。イタリア街というコンセプトでまちづくりを進めることで、街の特性を守る市場原理が働きます。

――こうしたまちづくりは衰退を続ける地方の中心市街地にも応用できませんか。

三浦  一部の商業コンサルに頼ってしまうのではなく、きちんとマーケティングすることが大切です。私自身気をつけていることですが個人がやりたいことと、人が求めていることは違う。深い歴史性、場所性や方向性をじっくり考えて、テナント誘致やサービス形態を決定していくべきです。有名チェーンを誘致しても独自性は出ない。地域住民の生活スタイルも崩れてしまう。自分の店のことしか考えないからだと思います。

――街にとって大切なものとは。

三浦  本当の幸せとは何かと考えた時に、イタリア人の良さというのは自分の住んでいる地域のためになることが大前提になっている。地域に貢献することに喜びを見出しながらお金も稼ぐ、そしてお金はその町で使う。だから誰も文句をいわない。日本は物価も上がり、給料も上がりましたが、本当の意味で豊かになったのか。イタリア人は物価を上げない努力、自分たちの生活スタイルを守る努力、家族経営している店を守るためにグローバルチェーンを徹底して入れない努力をしてきた。歴史や文化を大切にして、その延長線上を守りながら走っている、そんなところに共感を覚えます。


 イタリア街は現在、全体の34%が完成。06年には55%、開業のめどとなる07年3月までには70%が完成する見込みだ。浅草ッ子の熱い情熱が、夢を現実のものに変えつつある。
午後5時〜11時には、ツリーを中心にしたイルミネーションが幻想的な世界を生み出す(2005年1月5日まで)
現在、計画の34%が完成。全体が形になるのは3年後が目標だが、少しずつカフェなどもオープンしている
単純に真似であると切りすてられない暖かさが建物から感じられる
(聞き手 古沢大輔記者)

▼特定非営利活動法人 コムーネ汐留
〒105-0021 東京都港区東新橋2-9-5 パラッツオマレーア2階
TEL.03-3433-6727 FAX.03-3433-8653
http://www.comune-shiodome.jp/
設立=2004年4月1日、代表理事=大塚 明氏
www.comune-shiodome.jp/