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商業施設新聞
[2010.1.13]
ユニーク商業人列伝 第266回
千日前道具屋筋商店街振興組合 理事長 千田忠司氏
商店街が地域社会を支える
活性化に欠かせないのが「人づくり」
LED灯、太陽光発電を導入
千日前道具屋筋商店街振興組合 理事長 千田忠司氏 大阪ミナミのターミナル、南海難波駅から徒歩5分のところに千日前道具屋筋商店街がある。ここでは、“くいだおれ”のまち・大阪を支える飲食店の営業に欠かせない、食器や調理器具、厨房用品、食品サンプル、また看板やのれんのたぐいまで、ありとあらゆる商材を、プロはもちろん一般の観光客なども買い求めることができる。1995年にアーケードを掛け替えた時に、商店街正面に「道」と大書した看板を掲げた。道具屋筋の「道」を表すとともに、その商店街の中では、それぞれの専門の道に長けた魅力的な専門店を発見でき、その都度寄り道して、色々な道を発見してもらいたいとの意味を込めている。こうした個性派集団をまとめる千日前道具屋筋商店街理事長の千田忠司氏(=写真)に、活気ある商店街の活動について話を伺った。


 千田理事長は、10年ほど前から従来のイベント中心の販促活動を止め、「街づくり」「人づくり」「モノづくり」に焦点を当てた、新たな商店街活動をスタートさせたと語る。

千田 バブル崩壊を契機に、今までの自分達の商売を防衛するだけの商店街活動に限界を感じるとともに、商店街の存在意義を根本的に問い直してみた。そこで、1つの解として、モノを売るだけの商店街はもはや限界であることが判るとともに、地域社会を支え、文化・夢・楽しさを売る商店街を目指そうとの方針を立てた。
 また、それを実現するためには、従来のような単一商店街組織だけの活動では対応できないと判断し、98年にミナミを代表する近隣の戎橋筋、黒門市場、日本橋筋商店街と連携して、「大阪ミナミ広域活性化協議会」を発足させた。地域社会とともに生きる商店街の役目は、安全で、安心して生活できる街づくりであり、そこに集う人々を育む人づくりであり、そこで売っている商品の価値を体験を通して知るモノづくりであると思っている。「街」「人」「モノ」を商店街活性化のキーワードにしている。


 千日前道具屋筋商店街は、全国でも珍しい、業務用の厨房、食器具、包材、調理器具、食品サンプルなどを専門に扱っている商店街で、東のカッパ橋道具街と対比される。カッパ橋道具街は、大正元年ごろが起源であるのに対し、千日前道具屋筋は明治15年の創設と古く、今でも全国からお客がやってくる。

千田 昔は、業務筋のお客さんが中心だったが、20年ほど前から一般消費者をターゲットにするようになった。とは言っても、集客のために価格競争に走ったのではない。逆に、競争だけの社会では成しえない、お客さんとのコミュニケーションを通して一品一品を大切に売る、信用第一という商いの原点を守ることに徹した。これは同時に、不況で自信を失いかけていた商人自身の誇りを取り戻すことにもなった。
 私たちにとって、商いは文化だと思っている。その文化をさらに高めることによって、商店街自体の付加価値も高まるものと信じている」


 バブル崩壊後は、ご多分に漏れず、千日前道具屋筋商店街も来店客数が減ったが、賑わいを取り戻そうと2000年から修学旅行生の受け入れを開始した。主旨は、青少年の健全育成で、今までに累計で2万人以上の中学生・高校生が受講している。

千田 これも、千日前道具屋筋商店街だけの振興を目的としたものではなく、「大阪の商い体験」を通じて、大阪の良さをまるごと知ってもらうとともに、地域社会における商店街の役割や必要性を勉強してもらっている。希望される商店街には、そのノウハウを提供しようと考えている。「商(商い)」「笑(演芸)」「食(くいだおれ)」をテーマに、あきんど体験、芸人体験、実演販売体験(たこ焼きなど)、モノづくり体験(提灯絵付け、食品サンプルづくり)などを、1日7時間のコースで行っている。不登校生の親からの礼状、実習生の再訪などに加えて、一番うれしかったのは、新潟の学校からの便りで、「今まで東京への大学受験が圧倒的に多かったが、今年は大半が関西を受験する」とのことだった。


 千日前道具屋筋商店街は、大阪では有名商店街であり、常にリーダー的な役目を背負っている。ホームページも、大阪の商店街では日本橋の電気街に次いで2番目に立ち上げた。現在、大阪の商店街では初めて街灯にLED照明灯を導入する計画を進めている。これは、経済産業省が09年8月1日に施行した地域商店街活性化法に基づき事業認定されたもので、国から事業費の3分の1、市からは同4分の1が助成される。

千田 現在、アーケードの両サイドに計80余基の水銀灯を付けているが、補助灯としてそれぞれの横にLED灯を付ける。また、昼間点けている各商店の看板灯の電源として、アーケード上に太陽光発電パネルを設置する計画で、計6000万円の事業費を見込んでおり、09年度末までに取り付けを完了させる。


 千日前道具屋筋商店街の活動が評価され、経産省の「新・がんばる商店街77選」(09年)に選ばれた。06年に公表された第1弾の「がんばる商店街77選」にも選定されており、初回から連続の栄誉となった。

千田 地域社会を支えているのが商店街である、という意識を持つことが、今一番大事だと思う。修学旅行生との交流を通して、商店街は教育にも役立つことが判った。活性化に欠かせないのが「賑わい」。賑わいは、人の集まりであるとするならば、3つのキーワードのうちの「人づくり」が一番重要だ。
 競争社会の中にあって、人々は孤立しているのが実態だ。これに対しては、商店街はチームプレーが真骨頂である。最近、近畿地区商店街振興連絡会議のメンバーとして、和歌山県田辺市で発表を行ってきた。「新・がんばる商店街77選」に掲載されたのが縁だが、今後も機会があれば、「人づくり」を中心とした商店街活性化の必要性を、全国の商店街に訴えていきたいと考えている。


「顔」の大看板がかかる千日前道具屋筋の正面 商店街の中に入ると色々な道が見えてくる
(聞き手 町谷雄二記者)

▼千日前道具屋筋商店街振興組合
〒542-0075 大阪市中央区難波千日前5-19 河原センタービル5階 Tel.06-6633-1423
http://www.doguyasuji.or.jp/
理事長=千田忠司氏(千田硝子食器(株)社長)、加盟47店舗、商店街の類型=広域・観光型商店街、全長160m