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商業施設新聞
[2005.5.26]
スペシャルロングインタビュー2004 第4回
ボトムズ≠造った男 倉田光吾郎氏
鉄を中心にボーダレスな作品
商業施設のエクステリアなど手がける
 往年の人気アニメ「装甲騎兵ボトムズ」に登場する人型のロボットがいた。全長約4m、重量2tの圧倒的な迫力に、来場者は一様に憧憬のこもった眼差しを向ける。この鉄の「オブジェ」をたったひとりで作り上げた倉田光吾郎氏の本業は、商業施設の門扉や看板などを手がける職人である。
 2万人を超える個展の来場者を集めるきっかけとなったのは、1年にわたる製作過程を随時紹介したブログ『なんでも作るよ。』。このほど書籍化され、個展での先行発売では売り切れとなったほどの人気。売れ行き好調のため、増刷も決まっている。予想を上回る勢いに関係者は驚きを隠せない。
 倉田氏にお話を伺った。
ボトムズ
ボトムズ1 ボトムズ2 ボトムズ3 ボトムズ4 ボトムズ5 ボトムズ6
『装甲騎兵ボトムズ』 ©サンライズ
――「ボトムズ」を作ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

倉田  最近のプラモデルは組み合わせるだけで作れる手軽なものが多く、「作る楽しみ」を感じることが少なくなっていると感じていました。それならば、自分で一から作ってしまおう、と思ったのがきっかけです。
 ボトムズを選んだのは、ほかのロボットアニメにはない身近さがあったから。個人が所有していてもおかしくない不思議な感覚があった。デザインも格好良いですよね。「原寸で見てみたい」と思いました。

――本業は、鍛造の職人さんということですが。

倉田  オブジェや門扉、看板、シャンデリア、椅子など、カスタムで作っています。依頼があれば、個人宅の表札を作ることもある。インテリアからエクステリアまで、鉄を中心にしたトータルなデザインで、建築家やほかのデザイナーさん達の自由度を高めるお手伝いができれば嬉しいですね。

――業績はいかがでしょうか。

倉田  バブル期と比べてしまうと、正直に言って厳しい。企業にしろ、個人にしろ、細部のところにお金をかける人が減ったのでしょう。

――コスト優先ということですね。

倉田  既製品で充分というのもわかります。しかし、汎用品にも限界はある。細部にこだわることで訴求されるものもあるのではないでしょうか。
 また、社内にも色々と問題があって、職人の世界ゆえの融通のきかない部分など、変えていかなければならないでしょう。
「レストランJ」
「プチロード」の看板
職人としての技術が光るエクステリア
東京の「レストランJ」(上)
同「プチロード」の看板(下)

――ボトムズも商業施設に飾ったら、お客さんが増えるかもしれませんね。

倉田  個展を開く前は、「引き合いがあるかもね」と冗談で言っていましたが、蓋を開けてみると意外にありません(笑)。
 ボトムズにしてもそうですが、アーティスト「倉田光吾郎」を前面に出して、その上でビジネスの話につながると良いのかな、と考えています。

――値段がわからないので、および腰になっているでは。

倉田  もし売るとすれば、材料費+僕個人の実動を含めた実費ぐらい。儲けを出すことは考えていません。ただ、一年以上かけて作っているので、僕の人件費といっても、結構かかっているかも。

――ところで、原点である「鉄」に興味を持ったきっかけはなんだったのですか。

倉田  芸術家の父の影響が大きいです。生まれた時から、庭で父が鉄を叩いていましたから。鉄は、我々職人とっては扱いやすいものですし、感覚的に言っても、ごく自然で当たり前な材料です。僕の創作にとっても、木の幹のような存在。

――鉄以外の材料を作品に使うことはないのですか。

倉田  そんなことはありませんよ。鉄はあくまで中心であって、ほかの材料や分野にも興味がある。木や皮革だけでなく、エレクトロニクスなどの良いところも取り入れて作品を作っています。ボーダレスにおもしろいものを求めていきたい。知人からは、「節操がない」ともいわれますけどね。

――次は何に挑戦されるのでしょうか。

倉田  今はまず充分休みたい。その後のことは考えていませんが、人から「おもしろい」と言ってもらえるものが作れれば嬉しい。着地点は、そこになるんじゃないかと思います。例えば、ROBO-ONEなど動くロボットにも興味があって、ボトムズも操縦できたらおもしろかった。



会場風景 タイプライター 自転車(?)
 ボトムズのほか倉田氏の作品を集めた個展が東京で行われた。約2週間の会期で訪れた人々は、延べ2万1000人を数えた。当初、スタッフの集客予想は5000人程度であったというから、反響のほどは凄まじい。先行発売された倉田氏の書籍も予想を上回るペースで売れつづけ、会期終了を待たずして売り切れてしまった。また、ボトムズに使ったものと同じボルトに刻印を入れて販売したところ、あっという間に売り切れてしまい、自転車操業的に毎日作ることになってしまったということだ。ボルトを叩く作業で、倉田氏もお疲れ気味の様子だったが、決して人任せにせずに自分で作られたとのこと。倉田氏の人柄が伺える。  個展では、ボトムズのほかに、タイプライターや自転車(?)などのオブジェも飾られていた。倉田氏によれば、「タイプライターなどは、ドイツやアメリカ、ポーランドなど、海外からの反応が結構あるんですよ」とのこと。ボトムズばかりに目が向く日本人と嗜好の違いがおもしろい。話は、「人型のロボットは、キリスト教圏ではあまり受け入れられないようなんです」と文化の違いにも向けられた。欧米においては、「ロボットは人に従属するもの」という感覚が根強くあり、人と対等かそれ以上の存在としては馴染みが薄いという。
倉田光吾郎氏 倉田 光吾郎 (くらた こうごろう)
1973年東京生まれ。1991年に「FROM-A-THE-ART」で佳作に入選し、以後個展での活動や、調香師島崎直樹の「香り展」のオブジェなどを手がけ、精力的に活動を続ける。 1993年「HandsGrandPrix 内田茂賞」を受賞、1999年に新国立劇場の二期会特別公演「Le Nozze di Figaro(フィガロの結婚)」の舞台装置デザイン及び製作を行う。最近では、ベルリンで1年間の休養の後、2004年に活動再開を再開した。
(聞き手 本紙編集部)


倉田光吾郎著 『タタキツクルコト』 インフォバーン刊行(定価2100円)

 伝説的ロボットアニメ『装甲騎兵ボトムズ』に登場したスコープドッグを、鉄を使って原寸大で再現しようとの試みを行った一人のアーティスト。その製作過程は、自らのブログ『なんでも作るよ。』で報告され、ネットユーザーのみならず、多くのメディアを驚愕させた――そして、この春、巨大ロボはついに完成。その全容がこの一冊に収められた。
 あなたは、リアルロボのもつ迫力とかっこよさ、そして美しさに脱帽するはずだ。

「タタキツクルコト」表紙